2013年2月28日木曜日

伝統の福建料理店でママ友一家と旧正月のおごちそう Spring JuChunYuan

長い付き合いになる大学院時代の友人と何の縁かシンガポールで再会した。今では同じ働くママ友として、時間が合えば子供たちを連れて遊びや食事に行っている。先日旧正月のお祝いを兼ねて、子供たちと一緒にファーイースト・スクエアの伝統的な福建料理店でユーシェン(魚生)ディナーをいただいた。





中国には「八大菜系」と呼ばれる八大中華料理がある。

北京料理のルーツで宮廷料理として用いられた山東(さんとう)料理、上海料理の原型と言われる江蘇(こうそ)料理、淡水魚やエビを使った料理が豊富な浙江(せっこう)料理、生薬を使った薬膳料理で知られる安徽(あんき)料理、山海の幸や乾物を多用し広くは台湾料理も含む福建(ふっけん)料理、香港・マカオを含み飲茶をはじめ中華料理を世界に広めるのに貢献した広東(かんとん)料理、辛味と酸味が特徴で毛沢東も愛した湖南(こなん)料理、麻婆豆腐や担々麺など日本人も大好きなピリ辛料理で知られる四川(しせん)料理。

当店で出されるのは伝統的な福建料理だ。中国大陸の南東部、海峡を挟んで台湾を臨み、多くの東南アジア系華僑たちのルーツでもあるこの地域の料理は、山海の新鮮な食材や乾物をふんだんに使うほか、スープ料理が豊富で、土地柄海を渡って伝わったエキゾチックな香辛料を使うことも多い。





当店の店名になっているJu Chun Yuan(聚春園)の由来は、19世紀、光緒帝時代の清朝に遡る。福州のある役人の夫人が州の長官をもてなすために作った鍋料理があまりにも美味く、長官の料理人が夫人からレシピを譲り受け、再現してさらに改良を加えた。その料理人は1876年に聚春園菜館を開き、この鍋料理(当時は名無し)を出したところ、あまりの香りの良さに「仏様も瞑想を止めて壁を飛び越えてやってくる」と言われるようになり、それが、今では福建料理の代表的料理である「佛跳牆(ぶっちょうしょう)」あるいは「ブッダ・ジャンプス・オーバー・ザ・ウォール」として知られるようになった。

当店は実はこの名物福建料理の本家である聚春園菜館のシンガポール店で、福州市の協力を得て2007年に開業した。所在地から察せられる通り、この店はファーイースト・オーガナイゼーションの傘下にあり、飲食部門子会社のキッチンランゲージ社が運営している。





ともかく、この日は佛跳牆でなく、ユーシェン(魚生)が目的である。これ自体は広東料理が起源らしいが、シンガポール、マレーシア、インドネシアの華僑たちになくてはならないお祝い料理なだけに、この時期は色んな料理店で供されている。





鸿运风生捞水起
富贵鱼生
JuChunYuan Kanpachi Sashimi Yu Sheng Platter

カンパチのお刺身を使った豪華なユーシェン。ユーシェンは中国語の発音では「余升」、余りあるほど豊かになるという意味にも取れる。お皿を彩り良く飾る千切り野菜は、人参が幸福を、キュウリが若さを、大根が商売繁盛を表すという。





スタッフがひとつひとつ説明しながら、ユーシェンを作ってくれる。ライムを絞って吉兆を招き、胡椒を振りかけて財を招く。オイルをかけてあらゆる方向から富を呼び込む。





ピーナッツの金銀と、商売繁盛を呼び込む胡麻を降り入れ、金塊を表すクラッカーを乗せる。今年の開運は間違いなさそうだ(笑。





子供たちが唯一食材で遊んでも良い瞬間。みんなで今年のお願いをしながら、食材をできるだけ高く持ち上げる。高ければ高いほどより大きく願いが叶うらしい。子供たち、やるぞ〜!


さて、遊んだ後のユーシェンもしっかり食べる。これがなかなか美味しい。「メインが来る前におなかいっぱいになりそう!」と言いつつも友人とほぼ残さず食べてしまった。(しかも残りはきちんとお持ち帰り)





六六大顺迎新春
福州六冷碟
Selection of Fuzhou Seasonal Appetizer Plates

福州式の冷製アペタイザー。当店のシェフは福州出身で、福建省経済貿易委員会からトップテンシェフの称号を得た福建料理のエキスパート。すべてが上品な薄味で、日本人の舌に合う。





八方祥云献福来
花胶鱼翅羹
Sharks' Fin with Fish Maw in Thick Soup

次がフカヒレのスープ。フカヒレのコリコリとツルツルの両方の食感が楽しめ、まろやかで優しい。福建料理はスープが命みたいなところがあるが、その通りの美味しさで、子供たちも競っておかわりをしていた。






年年有余合家欢
福州清蒸笋壳
Steamed Live Soon Hock with Sliced Jin Hua Ham & Lup Cheong Sausage


蒸した白身魚を薄い衣でパリッと揚げ、少し甘めのソースに絡めた料理。味付けは見た目より薄く、小さい子供にもしつこくない。





岁岁年年添美满
金沙开边虾
Golden Stir-fried Prawns with Salted Egg York

殻まで食べられそうな新鮮なエビ。この辺りになると手づかみでむしゃむしゃと・・・(笑。





八方祥云献福来
扒烧肉
JuChunYuan “Pa Shao” Stewed Pork Belly

箸を入れたらす〜っと肉が切れる。真っ白いご飯の上に乗っけたらいくらでもおかわりできそう。中国酒のかすかな香り、ほどよい香辛料の味付けも良い。





财源广进庆有余
翡翠鲍鱼冬菇烩海参
Braised Abalone with Sea Cucumber in Imperial Stock

残念ながらピンぼけしてしまったが、こんなにガッツリと鮑を食べるのは初めてだ。柔らかい食感、優しい味付けで、これもいくつもいただける。あえて言うなら、アツアツのコシヒカリが欲しい(笑。





丰衣足食人人乐
芽心炒米粉
Stir-fried Heng Hwa Bee Hoon

子供たちが「ワーイ!」と飛びついた庶民派ビーフン(笑。しかし、ここはやはりお米が欲しい日本人な私であった・・・。





金银满屋步高升
缤纷水果青梅冻
Choya Fruit Jelly with Mixed Fruit Salad 

最後に現れたのが、ジャンボなフルーツ梅酒ゼリー! でもこのまま食べるのではなく・・・。





なんと上からザクロのジュースをかける。





これがいい具合に甘酸っぱさを醸し、ゼリーと見事にマッチしていた。このゼリーだったら自宅で真似できる。しかしこんなに美味しいザクロジュースはどこで買えるのだろう。


今回当店で食べたのは旧正月の特別ユーシェンディナーだったが、いつもは$38からのお得なセットメニューをはじめアラカルトも豊富にある。ひとつ注文するとしたら、お茶以外のソフトドリンクの種類を増やしてほしいということ。お酒のバラエティももう少しあるといいかなと思う。




当店の建築物はかつて華僑の子供達のためのフリースクールで、この辺りは中国から来た貿易商人たちの荷揚げ場だったそうだ。今では飲食店に変わったショップハウス以外にあまり面影がないが、そんなシンガポールの歴史の一コマを見に訪れるのにも良い。


今度はママ友とだけで、紹興酒を傾けつつ大人なディナーを楽しみたい。子供には内緒です・・・。


ごちそうさまでした!


Spring JuChunYuan
Far East Square
130 Amoy Street #01-01
http://www.juchunyuan.com.sg



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