2012年12月4日火曜日

会席の表現×繊細フレンチ パワーアップして帰ってきた Nicolas Le Restaurant

タンジョンパガー、オートラム、チャイナタウンの各駅を結んだ3角形。これを私は勝手に「グルメトライアングル」と呼んでいる。

ちょっと店の名前を思い浮かべるだけで、クレイグロードにはイタリアンの老舗「Pasta Brava」が、ダクストンには正統フレンチの「La Maison Fatien」、ステーキの「L'Entrecote(ラントレコート)」、イタリアンの「Etna」が、ケオンセックには女性ミシュランシェフが経営する「Provence」やビストロの「Taratata」が、ニールロードには餃子好きを唸らす「京華(チンホア)」が、ブキパソにはドイツ料理の「Magma」やカフェバー「Eight Cafe & Bar」が、と上げだしたらキリがない。もちろんタンジョンパガーロード近辺には美味しい韓国料理屋が乱立する。

彼ら(特に西洋料理店)の特長は、ショップハウスに店を構え、何かしら洗練されたスタイルを持っていること。多くがオーナーシェフが運営する店で、組織に属していない潔さというか、凛とした雰囲気が漂うのだ。

このトライアングルのなかでも最近注目の場所が当店のあるテックリムロード。ニールロードとケオンセックロードの間を垂直に走る小道だ。

戦前に建てられたアールデコ調のショップハウスを改装した飲食店が立ち並び、それをタンジョンパガーのランドマーク、ピナクル@ダクストンが見下ろしている。




南仏出身のシェフ、ニコラ・ジョアニーの名前を冠したそのレストランはこの小道のちょうど中ほどにひっそりと佇んでいる。下の写真の右手に見える灯りが目印だ。




もともとブキパソにあった超人気の店を、「家族の時間が欲しい」と今年3月にあっさりクローズ。ニコラは家族と水入らずの充電期間を持つとともに、日本へ単独3週間の修業の旅に。金沢の料亭「銭屋」で厨房を手伝いながら会席料理を学んだ後、名古屋、大阪、京都を旅した。日本で多くのインスピレーションを得て、この秋テックリムに店を再オープンさせた。




オープンキッチンに面したカウンター席もある店内は、南フランスのように明くて清潔感が漂う。




この日は元同僚たちとの食事会。お酒も食事も大好きな女性3人が集まった。
そしてテーブルの上には備前焼のようなお皿が。




ナプキンリングが可愛らしい。




この夜は、火曜日から木曜日の夜にだけ提供される$78の「4-Course Ala Carte」を予約しておいた。このクラスにしてはかなりリーズナブルなコースだ。




ここでも和テイストのお皿が。バゲットなのにしっくりくるのが不思議。




まずはアミューズブッシュ。

ORGANIC HEN EGG 'MOLLET'
Green Pea Bouillon, White Truffle Drop, Iberico Chorizo, Sweet Potato Chips


えんどう豆を泡立てたスープの真ん中にあるのは・・・。




なんと半熟卵! これを割ってとろける黄身といっしょにふわふわのスープをいただく。初めての食感。あまりの美味しさに3人でギャーギャー悲鳴を上げる(笑。


次は5つのチョイスから選べるスターター。




友人はアンガスビーフのタルタルを。

ANGUS BEEF TARTARE 'AU COUTEAU'
Sweet Potato Crisp, Quail Egg Au Plat




彼女より年上の2人はやはり米が恋しいと(笑)、リゾット付きの一品を。

ウェブサイトを探してみたらまったく同じメニューが見当たらなかったのだが、おそらくその都度変わる「FOUR FLAVOURS OF THE SEA」という海の幸を並べた一品で、一番奥にあるのがリゾット、右にあるのが北海道産ホタテのチップ、そして左手が魚の卵を何かのクリームで和えたものだったと思う。

とにかく目で愛でて舌で味わうというか、味付けも素材を活かした薄味で、日本人の舌に嬉しい味。

さてお次はメイン。これも5つのチョイスから選べる贅沢さ。3人がそれぞれ別の品をオーダーした。




PIGEON FROM THE LOIRE VALLEY
The Leg Slow Confit, The Breast Roasted




SLOW ROASTED ENGLISH PASTURE RACK OF LAMB
Peruvian Style Quinoa, Simple Lamb Jus
Infused with Rosemary




COD FISH FILLET CRUSTED WITH MASAGO
Purple Artichokes Puree

私はこの鱈をいただいた。とても柔らかく、シンプルな味だからピューレやソースと絡めてもしつこくない。本当に美味しい。

ニコラがオープンキッチンからちょくちょく様子を見に来てくれる。

「この皿もしかしてみんな日本の焼物?」
「いや全部シンガポールで買ったよ」
「日本では買わなかったの?」
「買ったけど、全部自宅用にまわしちゃった(笑」

金沢での修業が本当に心に残っているようで、「今の料理にもすごくインスパイアされている」と言っていた。もともとが繊細な味付けなので、料理自体にどのように影響されているのかは分からないが、会席料理に出てくるようなプレゼンテーションが美しい。

もともと南仏の自給自足の農家に育ったニコラ。小さい頃から食べるものは動物も含め自分たちで育てた。食材そのものの味をリスペクトし、それを殺さない味付けをするのが彼の持ち味だ。




さて、チーズワゴンの登場。もうこのあたりで2本目の赤ワインもかなり進んでしまった。このなかにはなんと中にトリュフが入っているチーズもある。




「僕を撮るなら10ドルだよ!」と陽気におどけるスタッフがチーズを取り分ける。
「このチーズから時計回りの順番に食べてね」とアドバイスを受ける。




カリカリのトースト一緒に。ワインもすでに空っぽに近づいてきた。




さて、デザートの時間。これまでのひとつひとつのポーションが小ぶりだったので、デザートまで飽きずにしっかり楽しめる。




最後まで和のテイストを取り入れたプレゼンテーション。 とにかく「いい仕事してますね~」って感じの繊細な手仕事だ。




「どんなに有名なシェフになっても、謙虚さを忘れてはいけない。自分はそれを日本で学んだ」というニコラ。日本人の私たちが逆に学ばされる。

ニコラをはじめ、「グルメトライアングル」で頑張るオーナーシェフたちに大きなエールを送りたい。


ごちそうさまでした!


Nicolas Le Restaurant
10 Teck Lim Road, Singapore 088386
TEL: (65) 6224 2404
http://www.restaurantnicolas.com/



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