シンガポールの若きセレブパティシェ、ジャニス・ウォンさんと、柚子生産高日本一の高知県がコラボレーションし、料理スタジオ2am:labで柚子三昧のテイスティングセッションが行われた。
柚子(本柚子)はそもそも中国原産と言われているが、日本では飛鳥・奈良時代には既に栽培されていたとの文献があるほど、日本の食文化のなかでも歴史の古い食材である。
でこぼこした表面が特長の柚子は、その強い香りと酸味から様々な調味料に使われてきた。私の田舎である九州北部には「柚子胡椒」という調味料があり、味噌汁を始めあらゆる料理の薬味として使われている。日本は柚子の生産高・消費量ともに世界一で、なかでも山間の気候が栽培に適した高知は、国内シェアの4割を占める屈指の柚子産地である。
最近では海外でも柚子の認知が広がっている。「世界で最も予約が取れないレストラン」として知られたエル・ブジで盛んに使われるようになって以来、フランス料理を中心に「YUZU」をメニューに取り入れるレストランが増えてきた。今回のイベントはシンガポールのシェフの方々への啓蒙という目的もある。その料理のメニューを考案するにあたり、ジャニスは高知に数週間滞在し現地で様々な調理法のリサーチを行ったという。
ここで少しジャニスの紹介をしよう。
小柄で顔立ちにあどけなさも残るジャニスは、20代の若さにしてホーランドビレッジの人気デザートバー、2am:dessertbarと、プロフェッショナル向け料理スタジオ、2am:labのオーナーシェフだ。シンガポール国立大学で経済学を専攻後、金融業界で働く両親と同じ道を辿らず、フランスの名門ル・コルドンブルーでお菓子作りを学んだ。その後メルボルン、ニューヨーク、シカゴ・・・と名門レストランで武者修行をし、シンガポールに帰国後Les Amisに勤めた。そこでジャスティン・クエックなどの地元のセレブシェフから薫陶を受け、2007に独立。午前2時までお酒とデザートを楽しめる新しいコンセプトの2am:dessertbarをオープンし、2011年にはlab(研究室)と称した料理スタジオをオープンさせた。
彼女の独創的な料理スタイルは高い評価を受け、2011年度のワールドグルメサミットでは女性でただ唯一「シェフ・オブ・ザ・イヤー」の一人に選ばれた。日本でもデザート対決の料理番組で勝利するなど、その活躍はシンガポール以外にも広がっている。今回ジャニスはどんな独創的な料理で私たちをアッと言わせてくれるのだろう。
テイスティングイベントはウェルカムドリンクで幕を開けた。
Cucumber Gin Sparkling
きゅうりのみずみずしさと炭酸が爽やかなカクテル。きゅうり独特の青臭さを柚子が中和している。
その後はテイスティングポーションで様々な料理が供された。高知から帰国後パートナーシェフと数カ月のトライアルを経て考案された、全てに柚子が使われた料理である。
Onsen Egg with Yuzu Mayonnaise
Mixed Salad With Myoga
Braised Myoga
Grilled Octopus with Yuzu Ketchup
Prawn Pasta
Glazed Chicken
Roasted Beef with Yuzu Hollandaise & Yuzu Shiso Condiment
Fermented Yuzu
上部写真の「発酵柚子ジュース」は実際は調味料として使う。酸っぱいが発酵によるまろ味がある。
これが柚子を発酵させているところ。ジャニスは料理に発酵調味料を積極的に使っており、最近も専門家を呼んでフェルメンテーションワークショップを開催している。
Bread(もちろん柚子入り!)
ししとうのなかに柚子のマーマレードを入れて、上からバーナーで焦げ目をつける。ししとうの辛味にマーマレードの甘酸っぱさが不思議と合う。
Stuffed Shihito
Pearls
Rubies (Water Chestnut)
Strawberry Juice with Yuzu Juice Ice Cubes
Short Cakes
White Chocolate Ganache
ここでジャニスが柚子ジュースにキタサンガムを混ぜ、薄く延ばし乾燥して作る「ペーパー」の実演をしてくれた。
乾燥するとこんな感じになる。これでチョコレートを包んだり、そのまま食べたりすることができる。薄いシートのなかに柚子ジュースの酸っぱさがそのまま閉じ込められている。
Paper
Sorbet
Parfait
Cheesecake
エンディングにはお楽しみの柚子風味コットンキャンディを。柚子が様々な料理に姿を変え、私たちの舌を最後まで楽しませてくれた。
今回料理に使われた調味料のなか簡単に作れるものをブログで紹介したいとジャニスに言ったところ快諾してくれた。どれもシンガポールの気候にぴったりの爽やかな調味料だ。
【柚子マヨネーズ】
材料: グレープシードオイル(80ml)、卵の黄身(20g)、柚子果汁(15ml)、シーソルト(1g)
作り方: 黄身と柚子果汁を混ぜる。ハンドミキサーで混ぜながらこのなかにゆっくりグレープシードオイルを入れ、マヨネーズの固さになるまで混ぜ続ける。最後にシーソルトを加える。
【ピクルス液】
材料: 柚子果汁(100ml)、酢(100ml)、水(100ml)、ローリエ(3枚)、シーソルト(2g)、砂糖(3g)
作り方: 材料全てを混ぜ、一煮立ちさせる。
【柚子バター】
材料: 柔らかくしたバター(500g)、柚子果汁(100ml)、シーソルト(5g)、砂糖(5g)
作り方: 柚子果汁を20ml程になるまで煮詰める。クリーム状になるまでバターを練る。バターに煮詰めた柚子果汁、シーソルト、砂糖を入れ、冷蔵庫で冷やす。
もちろん市販の柚子調味料も明治屋や伊勢丹など日系スーパーで手に入る。
2時間ほど柚子の奥深さを満喫したイベントだった。
ジャニスの独創的なスイーツを試してみたい方は、ぜひ彼女のデザートバーへ!
2am:dessertbar
21a Lorong Liput, Holland Village
TEL: 6291-9727
http://www.2amdessertbar.com/
柚子のお酒も美味しいのです♪
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