2013年1月17日木曜日

歴史とアートを感じに訪れたい一軒家のギャラリーレストラン 7 Adam

アダムロードのシンガポール日本人会のちょうど反対側辺りに、アダムパーク・エステートという場所がある。そのちょっと小高い丘に、黒と白を基調としたコロニアル様式の一軒家がある。




この館は今はシンガポール国立大学同窓会のギルドハウス(学士会館的なもの)を兼ねたギャラリーレストランとして機能しているが、太平洋戦争時、日本軍との戦いにおける連合軍の最後の砦としても知られている。

店に入る前に、少し歴史をひも解いてみることにする。

1942年1月31日、マレー半島を南に進撃した日本軍はジョホール海峡を渡りシンガポールへの侵攻を開始した。2月7日より日本軍優勢で戦闘が開始し、じりじりと包囲網が進む同月12日、連合軍司令官のパーシヴァル中将は、市街地にほど近い丘の中腹にあるこの建物(No.7)を英ケンブリッジシャー第一連隊の司令本部とした。同月7日に到着したばかりの唯一の完全編成部隊、英軍18師団がこれを防衛したが、ブキティマを占領し司令部を追い詰めた日本軍との戦闘は熾烈を極めた(アダムパークの戦い)。2月15日午後4時、パーシヴァルは上級指令部に投降を命じられ、この館から白旗を掲げながらアダムロードの日本軍の前まで歩いて行ったといわれる。そして同日午後5時15分、アッパーブキティマのフォード自動車工場における会談で、山下司令官に「イエスかノーか」と迫られ、英国は正式に降伏することとなった。

パーシヴァル中将の投降により結果としてアダムパークNo.7は守られた。平和を享受する現在は、シンガポールの若手芸術家を応援するギャラリーレストランにその使命を変え、この国の明るい今と未来をのどかに見つめている。


前置きが長くなったが、早速店に入るとしよう。




1階は白黒の格子模様が印象的なロビー。タクシーを待つのに重宝だ。




早速オブジェがお出迎え。シンガポールのアーティスト、クマリさんの作品。クマリさんは唐辛子のオブジェを制作するので有名だ。当店では定期的にギャラリーの展示品を入れ替え、それぞれをエキシビジョンとして展開している。




私が訪れた1月は、「11エレメンツ」と称して、シンガポールおよび周辺諸国の伝統芸術および新進芸術のアーティスト11人をフィーチャーしたエキシビジョンを開催していた。(といっても仰々しいものではなく、壁やフロアにさりげなく飾ってある)




芸術はその当時の世相を反映する。パブロ・ピカソは、スペイン空爆を主題に描いた「ゲルニカ」の写真を前に、ナチスに「これを描いたのは君か」と聞かれ「いや、違う、君たちだ」と答えたという。陽気で楽しい芸術作品はみな、平和の象徴なのかもしれない。




2階に上がると、広々としたダイニングエリアとバーエリアがある。美しい中庭もあり、夜はロマンティックな雰囲気に。何となく、昔広尾にあった羽澤ガーデンを思い出す。




そしてここがダイニングエリア。奥にあるのもダイニングエリアである。確かに司令部級の広さ。




本日はランチコースをいただいた。




Appetizer
Carrot and ginger soup garnished with sun-dried tomato and croutons

最初に生姜のピリッとした辛味を感じ、その後まろやかなかぼちゃの味が。サンドライトマトは甘酸っぱく、歯ごたえが良い。風邪をひいた日に効きそうなスープ。私は結構好きな味だ。




Entree
Mimosa of beetroot with truffle vinaigrette, mixed greens, egg and air dried olives.

赤ビーツの薄切りがきれいに皿に敷かれ、見た目も美しい。さっぱりとした味ながらトリュフの風味が深みを出している。




続いてメインコース、魚料理をオーダーしたお隣さんのお皿をパチリ。私はつまみ食いをしていないので味は分からないのだが、上々の評価だった。

Main course
Baked cod loin served with roasted baby potato with rosemary, green pea puree accompanied with lemon grass cream sauce




私はこちらを。

Braised beef cheek in miso and orange served with seasonal spring vegetables accompanied with 5 spice yam puree

肉自体はボリュームも大きいしほろほろと柔らかいし、申し分ないのだが、私には味が若干しつこく感じられた。私が20代ならば「美味しい美味しい」と食べたに違いないのだが・・・。




Pre-dessert
Yusu sorbet with applemint

先ほどのビーフのちょっとしつこい味を洗い流すかのようなシャーベット。柚子とアップルミントの爽やかさとシャリシャリとしたみぞれ感が良い。ビーフに使われた味噌もそうだが、ここは西洋料理店ながら、アジア、特に和の調味料や食材を使うことが多いのが特長だ。





Dessert
Chocolate brownie with vanilla ice cream with cinammon

お待ちかねのデザート。

私はブラウニーが得意ではないのだが、甘ったるくない甘さだったことと、アイスクリームの甘さもちょうど良く、「あれ? イケるね」といった感じだった。 あと、丸いアイスクリームを包むようにに何かマジパンっぽい食感のものがコーティングされており、それと一緒に食べるのが美味しかった。





少しギャラリーを見物し、帰路へ。そうそう、ここはやたらとタクシーがつかまりにくい。アダムロードに出ても、乗車拒否されることが多い。「オンコール」するか、バスを使うかなのだが、オンコールも捕まるかどうか、少し早めに電話するのが良いだろう。タクシーを捕まえる場合には、行く方向によっては歩道橋を渡って向こう側で待った方が良い。バスでタクシーが捕まりそうな場所までとりあえず行くというのも一案だ。




1階に下りてロビーで待つものの、シフトチェンジの時間帯のせいか、なかなかオンコールも繋がらず、結局アダムロードまで出て歩道橋を渡り、やっとタクシーを捕まえることができた。この面倒さがなければもう少し頻繁に来たくなる店ではあるのだが・・・。


この時ばかりは白馬より車に乗った王子様が欲しい・・・かも?

ごちそうさまでした!


7 Adam
7 Adam Park
TEL: 6467 0777
http://www.7adam.com



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