2013年2月22日金曜日

シンガポールの魅力満載トライアングルエリアに登場 ダイニング&バー Lime @ Parkroyal on Pickering

ニューヨークのロウワー・マンハッタンに「トライベッカ」という場所がある。「トライアングル・ビロウ・キャナル・ストリート(キャナル・ストリート南の三角地帯)」の略語だ。80年代、テナントを失った商業ビルにアーティスト達が住み始めたのをきっかけに、トレンド発信地として生まれ変わった。今ではレオナルド・ディカプリオやビヨンセらセレブ達が住むプライムエリアとして知られる。 

今回の舞台はニューヨークではなくシンガポールの三角地帯。シンガポールリバーの下、チャイナタウン駅、クラークキー駅、ラッフルズプレイス駅を三角形で結んだエリアは、いわば「トライアングル・ビロウ・シンガポールリバー」。伝統、ビジネス、ナイトライフという新旧の魅力が交差し、すぐ外れには、洒落たバーやレストランが立ち並ぶボートキーやクラブストリート、アンシャンヒルもある。


(C) 2013 Streetdirectory.com


しかし実際は雑多な商業ビルが立ち並び、脈絡なく個性に欠けるエリアに留まっている。ランドマークと言えば、先日政府が発表した人口白書に対する抗議集会が開かれたホンリムパークくらいだろうか。

・・・というのは、つい最近までの話。

この1月、ホンリムパークの道向かい、つまりトライアングルのほぼ真ん中に、パークロイヤル・オン・ピカリングがオープンした。世界に30以上のホテルを運営するパン・パシフィク・ホテルズ・グループが3.5億シンガポールドルをかけた新しいホテルだ。




数年前から工事が続いていたこの場所、去年くらいからユニークなフォルムが目につくようになった。全貌が明らかになったときは、段ボール箱で作ったオブジェのお化けかと思った。もとは何があったっけ?と思いシンガポーリアンの友人に聞いてみたら、「確かホーカーセンターじゃなかったかな」。かつての影も形もないので、ここが一体何だったか全く見当がつかない。




ホテルのデザインを手がけたのは、シンガポーリアンとオーストラリアンのデザイナーデュオ、「WOHA」。外壁にメッシュを取り入れたブギスプラスやクラウンプラザホテル、ドービーゴートの壁面緑化が印象的なスクール・オブ・アーツなどを手がけている。




都市開発庁(URA)の資料を調べたところ、2007年の入札時のこの場所の使用条件が事細かに提示されていた。そのひとつが緑化。緑豊かなホンリムパークとの協調性を保つことも条件とされていた。上の写真はホンリムパークに面した当ホテルのファサード。




敷地面積の2倍の壁面緑化、延べ15,000㎡のスカイガーデン、館内の各所に緑を植える設計により、ここは国内最大の緑化率を誇るビルになった。それに加え、センサー式照明、雨水の再利用、ニューウォーターの導入、ソーラーパネルの設置といった環境への配慮が評価され、政府からグリーンマーク・プラチナムの認証書とソーラー・パイオニア賞が授与された。




5階にあるスカイガーデンはソファーが点在するくつろぎの空間。鳥かごのような展望スペースが印象的だ。




スカイガーデンの上にもガーデンがある。未来的でありながら、アジアでよく見かける段々畑をイメージさせるのが面白い。




館内にはまだ旧正月の雰囲気が漂っていた。




天井にもユニークなオブジェが。何層も重なったランダムな曲線のうねりがこのビルのデザインの共通テーマのようだ。




螺旋階段にはまるで籐かごの網の目のようなメッシュが施されている。WOHAが手がけたビルには、クラウンプラザホテルのように、光が生み出す陰影を組み込んだデザインが多い気がする。




このホテルの1階にあるLime(ライム)が当ホテル唯一のダイニングエリアだ。オープンコンセプトに基づき、ウエスタン、ジャパニーズ、アジアンの3つのオープンキッチン、カフェ&デザートエリア、バーエリアが見渡せるようになっている。




朝は6時から、平日は深夜まで、週末は午前2時まで開いている。朝食ビュッフェ、ランチビュッフェ、ディナービュッフェのほか、コンチネンタルスタイルのアラカルトもある。ちょうどランチビュッフェの終わりあたりにここを訪れた。




デザートバーには様々なスイーツが。




ウエスタンスタイルのものもあれば・・・




ご当地スイーツもたっぷりと。




手作りマシュマロがおいしそ~っ!

ここでは紹介できなかったが、和・洋・中・ローカルと料理も豊富。これで$58のランチビュッフェは、ちょっとしたお祝い事に使えそうだ。




天井まである大きなガラス窓から自然光が差し込む。窓からホンリムパークが見える。




こちらはバーエリア。私の今回の目的はここ(笑。
オリジナルカクテルをいただきにきた。

今回オーダーしたのは、「セント・オブ・ピカリング」(ピカリングの香り)というカクテル。




世界最古のリキュールメーカーとして知られるボルス社のジェネバ(ジン)、バニラフレーバーのウォッカ、オレンジとマンダリンのビターを、ゼンデトックスという緑茶ベースのハーブティとミックスした。




残念だったのは、全てのフレーバーが主張しすぎていたこと。いただいた後、レシピを作られた若いバーテンダーの方と話をした。色んなリキュールや材料をご存じで、探究心旺盛な方とみたが、ちょっと欲張りな方に作用しちゃったかな、と思い、少し引き算してみたら・・・と生意気にもコメントしてしまった。その代わりと言ってはなんだが、来週また飲みに来る約束をした。

場所柄、ディナーが決まっていない夜の友人との待ち合わせ場所として重宝しそうな気がする。ディナーの場所をあれこれ相談しながら、美味しい食前酒を一杯飲むことができれば最高だ(しかしカクテル$20の値段設定はちょっと高いかな)。

ついでにビュッフェの値段は以下の通り。

朝食: 大人 $35++ 子供 $17.50++
ランチ: 大人 $45++ 子供 $22.50++
ディナー: 大人 $58++ 子供 $29++




今後は当ホテルを皮切りに、このトライアングルエリアも変貌していくのだろう。商業ビルが取り壊されて何か別物に代わる、というドラスティックな変化になりそうだが、その度にURAがきっちりと開発条件を付けてくるはずだ。緑いっぱいの理想的なアーバンエリアとなるだろうか。


ごちそうさまでした!(今回はカクテルだけですが・・・)


Lime
Parkroyal on Pickering
3 Upper Pickering Street
TEL: 6809-8888
http://www.parkroyalhotels.com/en/hotels/singapore/pickering_street/parkroyal/index.html


2013年2月19日火曜日

【オマケ付!】春の足音を感じる元祖おまかせコース 八

モハメドサルタンの八(はち)はシンガポールに「OMAKASE」という言葉が定着する前からおまかせ料理を提供してきた、当地におけるおまかせの先駆者である。その時その時の旬の食材を、最も美味しい調理法で提供するというポリシーは、創業以来変わらない。ローカル客を中心として長年のファンが多いのもこの店の特長だ。




昨年の夏、米国や中国で寿司職人としてキャリアを積まれた山口シェフが、年明けには京都で会席料理を学ばれた向浦(むこうら)シェフが参加され、今は日本人シェフ2人体制になった。私自身、この店のオーナーと仲が良いことや、オフィスの眼と鼻の先にあることから、ちょくちょく遊びに行っている店である。




真ん中にいらしゃるのが山口さん、左端の方が向浦さん。ショップハウスにある店内は長いカウンター席とテーブル席、個室も備えられている。昼間は一部ガラスになっている天井から日光が差し込み、夜のまったり感とは違う爽やかさがある。

この夜は向浦さんが作ったおまかせディナーを初めていただいた。




長芋と霜降りしたほっき貝 ポン酢のジュレがけ
今流行っている低温調理「50度洗い」は、そもそもフレンチレストランなどで取り入れられていた調理法らしい。このほっき貝もお酒と水を割って沸かしたものを50度程に冷ました中にくぐらせることで、柔らかい触感が保てるのだそうだ。ほっき貝は北海道や東北を主産地とし12月~3月が旬。まさに今の食材だ。




きんぴらと梅パプリカのマリネ 鰯の梅煮 菜の花のからし酢味噌かけ
「東風(こち)吹かば匂ひをこせよ梅の花」とは、平安時代、讒訴(ざんそ)により太宰府に流された菅原道真が、都を思って歌った歌。道真さんも左遷先が現代のシンガポールだったら、東風ならぬクール便でいつでも京の旬の味覚を楽しめただろう。




ヒラメ、金目鯛、カンパチ、甘エビのおつくり
クルクルとリボンのような「より人参」は、桂剥きにした人参を斜めに切り、それを菜箸に巻きつけると「簡単にできる」らしいのだが、桂剥きも簡単にできない私は、おとなしく食べる側に徹したいと思う。




八の定番料理は、このオーストラリア産の大粒の牡蠣。トッピングは、エシャロットのみじん切りを入れた明太子マヨネーズとグリュイエールチーズ。軽く焼いてあるのが気づかないほどふんわりとした食感。




白子と菜の花、梅人参のお吸い物
梅は別名を「春告草(はるつげぐさ)」と言う。 まさに春を告げるようなお椀。白子は焼いて香ばしさを出し、梅の花に形取られた金時人参が、薄氷(うすごおり)大根の下から春が来る日を今か今かと待ちわびている。この薄氷大根は輪切りにした大根を炊いて冷まし、その後、一枚一枚、先が透けて見える程の薄さに切っていくそうだ。素人の私は「先にピーラーで切ってから炊いたら~」などと思ってしまう訳だが、そうすると炊いた時に波を打ってしまうそうだ。




甘鯛のかぶら蒸し
寒さの厳しい冬の京都で、体の芯から温まる定番料理といえばこのかぶら蒸しだそう。京都に何の縁もない私にとって初めての料理。美味しくてびっくりした。すりおろしたかぶのなかに、きくらげ、銀杏、ゆり根を混ぜ、それを甘鯛と一緒に蒸す。まろやかな銀あんをかけて、ピリッとわさびを。上に乗っているのは、甘鯛のうろこを上げたもの。この季節の甘鯛のうろこは美味しく、調理の際に剥いだ皮を一口大に切り、粉を付けてさっと揚げると、パッと花が咲いたような形になる。これがパリパリとして美味しい。うろこまで無駄なく食べられるなんて知らなかった。




雲丹とカンパチのお寿司
品の良い小ぶりのお寿司で、このコースのボリュームにはちょうどいい。




近江牛のサラダ仕立て
白味噌のドレッシングの上に、表面をグリルした近江牛を。上に乗っているのは明太子を詰めたししとう。ししとうは、柚子料理の回のブログで取り上げた柚子マーマレード入りでも美味しいかなと思った。




なまこ 土佐酢と大根おろしで
このなまこも固くなららないように50度の低温調理法で調理されており、大根おろしとともに喉越しよくいただいた。なまこは私にとっておふくろの味。小さい頃はスーパーの生け簀(というかバケツ)で見ても全然平気だったのが、物心ついた頃におっかなくなり、今はまた大好きな食べ物に。今度家に帰ったら母に料理の仕方を教えてもらわなければと思う。


八では、こんな感じで旬の味覚が次から次へと供される。通常のおまかせディナーは$118で、全部で9品から10品ほど。仕入れの内容によって大体2週間ごとにメニューが変わる。お昼のおまかせは$68で5品から7品。お昼は$38の松花堂弁当などアラカルトメニューもある。




今回のおまかせを担当された向浦シェフは30歳という若さながら、キャリアは既に12年。学校を卒業後、「和食を学びたい。和食なら京都に行きたい!」と、故郷の和歌山を離れキャリアを積まれてきた。「でもやっぱり母の作る料理がどんな料理よりも一番美味しい。」と言われ(諭され)、私も一応母だけにもう少しは料理ができるようになろうと思った夜であった・・・(笑。

さて、表題にある【オマケ付!】にあるとおり、両シェフに「きよみのブログを見た」と言うと、何か「オマケ」をもらえることにしていただいたので、今後八に行かれる方はぜひお忘れなく! 山口さん、向浦さん、宜しくお願いしま~す(^_^)/


おまかせのパイオニアでありながら日々進化を続ける八にこれからも期待します。


ごちそうさまでした!


Hachi Restaurant
6 Mohamed Sultan Road
TEL: 6734 9622
http://www.hachirestaurant.com


2013年2月15日金曜日

シンガポールの代官山になりそうな(?)ティオンバル地区の新しいカフェ Flock Café

まだティオンバルにヒップなカフェや雑貨屋が集まる前、私はそのすぐ近くのリバーバレーの端っこに住んでいた。その時のティオンバルと言えば、ウェットマーケット、1930年代に立てられた古いアパート群(ティオンバルエステート)、ローカル向けモールのティオンバルプラザといった垢抜けないイメージがあった。数年前リバーバレーのコンドを退去する際にティオンバルエステートの一角に住むことを考えていたのだが(当時はまだ家賃も安かった)、結局アッパーブキティマに引っ越してしまった。今考えたらちょっと惜しかったかなという気もする。




そんなティオンバルが様変わりをし始めたのはほんの数年前。2005年にインディーズブックストアの「Books Actually」がオープンしたのを皮切りに、2年ほど前に、エステ経営大手Spa Esprit系の「40 Hands」、「Open Door Policy」、「Tiong Bahru Bakery」が、そして去年は和食の「Ikyu」がオープンした。最近はついにあの「P.S. Café」もテイクアウト店舗(下写真)を出している。




シンガポールで代官山に匹敵する場所と言えば、雑貨部門ではアラブストリートの「ハジレーン」になるだろうが、今やカフェ部門では「ティオンバル」というほどの成長ぶりだ。これにはSpa Espritの3店舗出店がかなり貢献している。現在では彼らの店と同じくらいヒップな店たちがその波に乗り次々と進出しているという状況だ。

Flock Café(フロック・カフェ)は、ティオンバル駅から徒歩5~6分、Books Actually、Open Door Policy、40 Handsが立ち並ぶヨンシアックストリートの並びに昨年10月オープンした。




このエリアはちょっと変わった形をしている。低層の住宅群を前方後円墳のような形でぐるっと囲んだ輪の側面がヨンシアックストリート、フロック・カフェがあるモーガンテラスはちょうど半円の部分から先の道、その先がガンチュアンストリート、それに蓋をする直線の道がチャイヤンストリートである。中にある低層の住宅群には、かつての表参道の同潤会アパートのように、様々なショップが入っている。もちろん住んでいる人もいる。


 (C) 2013 Streetdirectory.com


土砂降りの雨のなか、知人に会うために私は別の店で待っていたのだが、知人が「すでにこの店で待っている」と言うので、チェッと思いつつ(笑)その店に向かった。こちらは雨が上がった後の写真。




オープンしたばかりだったのでまだ聞いた事のないカフェだった。
店の外にはいくつかのテラス席があり・・・。




こちらは「半露天」というか、玄関の広い軒先を利用したスペース。ここならこんな日でも雨音と涼しい風を楽しめる。




さて知人がいる店の中に。北欧風の雰囲気と新しいお店ならではの清潔感が漂う。




お客さんの写真をポラロイドで撮ってここに飾っていく「ウォール・オブ・メモリーズ」。さっきフェイスブックを見たら、この時よりかなり多くの写真が飾られていた。




オーダーはカウンターで。メニューは全て2枚の黒板に書かれている。ホットサンドウィッチがここのスペシャリティ。




2枚目の黒板には終日オーダーできるブレックファーストセットとサラダ、ティオンバルだけにバラエティあふれるイタリアンコーヒー各種、そしてその他のドリンクが。良く見ると、え・・・? アルコールがない! オーナーのエディスさんに聞いたら、「まだアルコール販売のライセンスを取ってないのよ~」と言われた。当分は「純喫茶」スタイルで店を運営し、ある程度落ち着いたところでライセンスを取るそうだ。




早速当店自慢のサンドイッチをオーダー。
豚のほほ肉とグリュイエールチーズのホットサンド。$11.9なり。




 チーズがとろ~り。ほほ肉のほど良い味付けにマッチしている。




そしてカプチーノを。どんなアートが出てくるのかな、と思いながら待つのが楽しい。
答えは「ハート」でした~(*^_^*)




当店が扱っているコーヒー豆は、イタリアで創業100年以上の老舗、コーヒーを飲めなかった人も虜にするという「魔法のコーヒー」で知られるカフェ・カリアーリ製・・・。




しかし今フェイスブックを確認したら、どうやら地元のコーヒー卸業者リバティコーヒーに鞍替えしたようだ。ここのバリスタによる指導も受けているようで、もしかしたらもっと美味しくなっているかもしれない。オープン直後なのだから、今色々試してみることも大事だ。




何だかケーキが美味しそうにディスプレイされていたので、キャロットケーキをオーダーしてみた。




中には木の実やドライフルーツ、ナツメグなどの香辛料が入っている。ちょうどクリスマス前に訪れたので、屋外の景色に目隠しをすれば、フィンランドやノルウェーの冬のカフェといった雰囲気だ。(かく言う私もその時はTシャツ姿だったが・・・)




おさえた甘さとドライフルーツの触感、スパイスの風味が私好み。これだったらもう1スライス食べられそうだ。




オーナーのエディスさんは、金融業界を脱サラ(女性の場合は一体何というんだろう・・・?)し、このカフェをオープンした。以前ご紹介したBitters & Love同様、最近キャリアウーマン(というのも古い言葉だが)が仕事を辞めて飲食業界にチャレンジする事例が増えている。会社である程度の地位を築き、リスクも知った上での転職なのだから、「頑張って!」と全面的に応援したい。お酒のライセンスが取れたら、ワインテイスティングのイベントをやりたいね、と話している。もちろん、この店のスペシャリティはコーヒーなのだが(笑。

これからもティオンバルの「前方後円墳」エリア近辺にこんなカフェが増えていくはずだが、いたずらな家賃高騰を招かず、これからも独特な世界観を持つオーナーたちが楽しくお店を運営していけるような場所であってほしい(人気ブックストア「Books Actually」でさえ最近家賃の保証金のファンドレイズをせざるを得なくなった)。それがひいてはティオンバルというユニークなエリアの価値向上にもつながるはずだ。


ごちそうさまでした!


Flock Café
78 Moh Guan Terrace #01-25  Tiong Bahru Estate
https://www.facebook.com/flocksg