2012年12月7日金曜日

唐津湾を臨む客室で山海の幸を堪能する 水野旅館

佐賀・唐津には由緒ある高級旅館がいくつかある。
明治9年より続く綿屋、樹齢200年の老松が茂る洋々閣。
そして、昭和28年創業ながら高級旅館の代表格のひとつに成長した、水野旅館。

去年、息子の冬休みを兼ねて実家に帰った時、大学院時代の友人が東京から遊びに来てくれた。
初めての唐津を存分に楽しんでもらおうと、この旅館でお昼の日帰りコースを予約した。
豪勢そうに聞こえるが、お昼なら客室で高級食材を十分食べて7,000円でお釣りがくる。
しかも檜風呂に入り、浴衣で寛ぐこともできる。




唐津城につながる古い石垣の道をたどると、
唐津初代藩主寺沢公が約400年前に名護屋城から移築した武家屋敷門が現れる。
門をくぐり玄関に入ると、お正月らしい艶やかな着物姿の若女将が出迎えてくれた。




この旅館の特長は、全ての部屋から海が眺められることだ。
寺沢公が400年前に防風林として植林した松の木。
もう少し東に行くと、全長5キロの虹ノ松原がある。




唐津焼で飲む日本酒は美味しい(ちなみに唐津焼で飲むビールも美味しい)。
地元、鳴滝酒造の「太閤」ではなかったかと思う。




なまこの酢の物。私にとってはおふくろの味。
中華圏ではもっぱら干しなまこなので、久しぶりの生の歯ごたえが嬉しい。




唐津といえばイカの活き造り! お店によって切る幅が違うが、ここのは細い。
こんなに上品な活き造りは初めてかもしれない。




お待ちかね、佐賀牛の網焼き。柔らかくてジューシー。




茶わん蒸しも唐津焼で。




せっかくなので、追加で佐賀牛のせいろ蒸しを注文した。
霜降り肉の佐賀牛は、蒸して程よく脂肪分を落し、その落ちた脂肪分が絡みつく野菜とともにいただく、という食べ方が一番美味しいと思う。せいろ蒸しはほとんどの佐賀牛専門店でいただくことができる。




唐津はさざえでも有名。ここから西に10キロほど行くと、つぼ焼きの露店が立ち並ぶことで有名な波戸岬がある。




イカの活き造りを食べた後、残ったゲソはこのように天ぷらにしてくれる。唐津でイカの活き造りを出してくれる店では、余ったゲソを下げる時、たいてい「天ぷらにしますか、塩焼きにしますか」と聞いてくれる。私は、ふんわりしたゲソの味を楽しめる天ぷらが大好きだ。イキのいいゲソは、驚くほどふんわりしているのだ。




佐賀市富士町で獲れた棚田米は、甘みとしっかりとした歯ごたえがあって美味しい。あらのお味噌汁だけで何杯もおかわりできる。




やはり地元で獲れたいちごを添えたデザート。もう動けないほどおなかがいっぱいだ。




ところで、ブログを書くために水野旅館さんのウェブサイトをのぞいたら、料理長(社長)さんの経歴がユニークなことに気付いた。一代目(現会長)は京都大学を卒業して6年間の商社勤務の後、先々代の紙問屋の別荘を譲り受けて脱サラし、旅館を開業(お父さんからユニークではある)。二代目社長も同じく京都大学を卒業し、何と気象情報を提供する会社に10年程勤めた後、家業を継がれた。いずれはと決心されていたとは思うのだが、旅館業や飲食業からはちょっと想像し難い業界に身を置かれていたのが面白い。兎にも角にも、大満足の美味しい料理だった。




旅館を出て、腹ごなしに近くの旧高取邸に足を運んだ。
19世紀末から20世紀の始めにかけて、「肥前の炭鉱王」として名を馳せた高取伊好(たかとりこれよし)の旧宅で、国の重要文化財。




1905年に建てられたどこか和洋折衷のこの邸宅は、高取家から市に寄贈され、修復を経て2007年に一般公開されたばかり。実は私も初めて訪れる場所だ。




建築当初から残るガラス窓。中には美しい細工や仕掛けが施された欄間や能舞台があり、当時の豪華絢爛さを物語る。




明治モダンらしいレンガ造りの部分も。この蛇口はいつのものなのだろうか。




地下にはワインセラーが。このひんやりとした蔵に、ヨーロッパから遥々海を渡った高級ワインたちがいくつも並べられたのだろう。




封をされているのは、昔の井戸だろうか。




怖いような、ユーモラスなような、不思議な虎の像がこちらを向いていた。


もう少し足を延ばして、唐津城へ。春は桜が美しい天守閣の門。




眼下には唐津湾が。その遥か先には、かつて太閤秀吉が目指した大陸がある。




朋あり遠方より来る、また楽しからずや――。
友人はその後とっとと福岡の宿泊先に踵を返し、「おい日帰りかよ!」と突っ込みたくなったが、それでも心に刻まれる楽しいひと時を過ごした。

今度は泊りがけできましょう。


ごちそうさまでした!


水野旅館
佐賀県唐津市東城内4-50
TEL: 0955-72-6201
http://www.mizunoryokan.com/


 噂のゴマさば。

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